特許権にこんな落し穴がある
ご存知でしたか・・・?
特許権の落し穴・・・!
『特許の上手な出し方』でも触れましたが、特許権は、明細書の書き方一つで強くも弱くもなり、広くも狭くもなります。
狭くて弱い特許権は、チョット手直ししただけで権利に触れず、大威張りでマネされます。
こうしてマネた商品を私は、合法的模倣(造語)と言っております。
実際に起きた合法的に模倣例を取上げました。
事例1は、「宅配便の送り状(合成樹脂製袋)」です。
この例は、政府機関の郵便局(現郵政公社)も一緒になって合法的に模倣(坂井の造語)した例です。
事例2は、「ファスナー(マジックテープ)」です。
この例は、大企業が、中小企業に合法的に模倣された例です。
事例3は、「窓用換気扇」で、簡単に窓に取り付けられるものです。
チョット古い話ですが、中小どころか従業員数名の零細企業が、大企業に合法的模倣で蹂躙され、倒産した事例です。
特許法だけでなく法律では、合法的であれば、取り締まることができません。
政府機関であろうとも、大企業であろうとも、ましてや中小企業、企業規模の大小に関らず、特許権にはモノマネが横行しています。
何れの例も、特許出願人がチョット気をつければ90%解消できるのです。
ある特許庁出身のの弁理士が書いた著書に『特許は、自分で守れ』と言う主旨のものがあります(著者名も正確な書名も忘れました)。
特許権は弁理士が守ってくれるものではありません。
出願人が、自分自身で守らねばならないのです。
特許出願の前に対策を練りましょう・・・!
弁理士への丸投げ出願は、止めましょう・・・!
特許権が取れたので模倣品を叩いたら裁判で負けてしまった。
何故だ?
こんな話を良く聞きます。
最大に理由は、弁理士への丸投げ特許出願です。
出願人が、試作で成功した発明品の図面を起こし、弁理士に試作品と図面と共に発明品の簡単な説明をし、後は、よろしくたのむという特許の丸投げ出願にあります。
例えば、コイルバネが使われた1つだけしかない試作品とそれを示すただ1つの図面を見せられた弁理士は、コイルバネを使った発明品だけで特許出願するのが一般的です。
この発明品の売れ行きが好調なとき、この特許出願の内容を見た少し特許に詳しい模倣者は、両手をたたいて大喜びします。
早速、合法的模倣(造語)に取り掛かります。
先ず始めに、コイルバネの代わりに板バネやゴムを使ってつくります。
これだけで特許権に触れなくなりますから、あちこちから合法的模倣商品が続出し、手のつけようがなくなり、アット言う間に商品寿命が尽きてしまいます。
この特許出願の落し穴に嵌らないために出願人は、弁理士に特許出願を依頼する前にコイルバネの代わりができるものがないかを検討するだけで、こうした合法的模倣の80%は防げます。
コイルバネの代わりに、板バネが使えないか?
バネ座金が使えないか?
発泡材が使えないか?
ゴムではどうだ?・・・。
更に欲張って、コイルバネの取付け方、使い方はこれで良いのか?
大きさはどうだ?
材質はどうだ?
・・・検討課題は無限にあります。
せめてコイルバネの代わりに板バネやゴムが使えることを確認し、必ず弁理士に伝えて下さい。
この一言で一般に弁理士は、「弾性体」という言葉を使ってコイルバネ、板バネ、バネ座金、発泡材、ゴムなどの模倣品を防いでくれます。
事実これに類する相談を私が受けたことがあります。
出願人は、ある機械を発明し、弁理士に依頼して特許出願し、特許権も獲得しましたが、模倣品が出て防げませんでした。
推定ですが、前に説明したような丸投げ特許出願だったようで、いわゆる合法的模倣品であったと思われます。
と言うのは、出願を依頼した弁理士が真剣に相談に乗ってくれないと怒っていたのです。
模倣者は、恐らくこの特許の明細書を見て、権利に触れないように改良したものと思われます。
以下、実例を交えて「非まじめ発創による新商品開発」と「特許出願の上手な出し方」
について、皆様のお役に立つ情報をできるだけ分り易く説明します。
以下の具体的な事例を 参考にして下さい。
あッ! それから
このページは、是非、最後までお読みください。
具体的な 落とし穴『脱出対策』 も書いてありますよ!
↑ ↑ ↑ お急ぎの方は、先にお読みください。
事例1.郵政公社も使っている『宅配便の送り状』
具体例として
郵政公社も使っている『宅配便の送り状』で説明しましょう。
事例1. 「宅配便の送り状(合成樹脂製袋)」:東京地裁
東京地裁で争われた「宅配便の送り状(合成樹脂製袋)」です。
始めに図を見てください。
この送り状は、今では、郵政公社も、クロネコも、佐川も、ペリカンも・・・宅急便業者は、皆使っているお馴染の送り状です。
図1
図2 
郵政公社を始め、今、使われているほとんどの宅配便用送り状の形式です。
大変固い文章で恐縮ですが、判決文の引用なのでお許し下さい。
要旨では、『接着剤の塗布面を被覆する剥離紙の構造について、「裏側フィルムにはその下面の両端部に感圧接着剤が帯状の形で塗布してあって、この接着剤面は剥離紙で拝合被覆される。」・・・
この「拝合」の「拝」両手を合わせて手を上げる礼を意味し、「合」は一つになる、一致する意味を有するから、・・・「剥離紙」は、感圧接着剤を塗布した裏側フィルム全面と同形同大の1枚の剥離紙をいい、剥離紙が2枚のものを含まない・・・』と判決しました。
小学校の国語教室は、もっと分かりやすいですね。
でも、これが特許裁判なんです。
裁判では、代理人の弁理士が、互いに相手の文章のアラ探しをやりあって、裁判官を信用させた方が勝訴なのです。
もし出願人が、弁理士に出願を依頼する前に、剥離紙が1枚の試作品と、2枚の試作品をつくり、両方の例を説明していたなら、弁理士は「拝合」と言う表現を使わず、裁判にも勝てたでしょう。
弁理士の仕事は、お客様から頼まれ説明された内容を如何に正確な文章で書き、特許出願するかにかかっています。
実施例を考えて書き足すことは、時間的に大変な負担です。
そのうえ、商品開発の才能が必要で、忙しい弁理士には対応できません。
又、弁理士は、実施例を考えて書き足すことを本来の仕事とは考えておりません。
それは出願人の仕事だと考えておりますから実施例の書き足しをやる訳がありません。
裁判官もそのように考えているようです。
一部の弁理士は、バネを弾性体など上位概念(バネもゴムもスポンジも含む広い意味)で表現し、権利範囲の拡張に努めてくれます。
ホンの一部の弁理士だと心得ておいたほうが良さそうです。
結論として、「自分の特許は、自分で守る」しかありません。
弁理士に出願依頼する前に、特許出願人自身が、いろいろな条件や試作品を検討し、どんな内容の特許出願をするか検討しなければ、強くて広くかつ模倣されない特許権は取れません。
少なくとも事前に複数の試作品を造り、この複数の試作品を依頼する弁理士に見せて説明して特許出願の方向を決めて下さい。
少なくとも、2つ以上の実施例を書き、請求項が限定された表現にならないように気をつけてもらいましょう。
そのためには、【非まじめ発創法】で【観る】ことから始めてください。
強いて言えば、【観りゃ〜ぁ、分る】が、【見てても分らん】と言うことです。
【観て】 ⇒ 【目的を追求し】 ⇒ 【新しい手段を組合せる】
忘れないでくださいね!
郵政公社も使っている『宅配便の送り状』で説明しましょう。
事例1. 「宅配便の送り状(合成樹脂製袋)」:東京地裁
東京地裁で争われた「宅配便の送り状(合成樹脂製袋)」です。
始めに図を見てください。
この送り状は、今では、郵政公社も、クロネコも、佐川も、ペリカンも・・・宅急便業者は、皆使っているお馴染の送り状です。
図1
図2 
郵政公社を始め、今、使われているほとんどの宅配便用送り状の形式です。
大変固い文章で恐縮ですが、判決文の引用なのでお許し下さい。
要旨では、『接着剤の塗布面を被覆する剥離紙の構造について、「裏側フィルムにはその下面の両端部に感圧接着剤が帯状の形で塗布してあって、この接着剤面は剥離紙で拝合被覆される。」・・・
この「拝合」の「拝」両手を合わせて手を上げる礼を意味し、「合」は一つになる、一致する意味を有するから、・・・「剥離紙」は、感圧接着剤を塗布した裏側フィルム全面と同形同大の1枚の剥離紙をいい、剥離紙が2枚のものを含まない・・・』と判決しました。
小学校の国語教室は、もっと分かりやすいですね。
でも、これが特許裁判なんです。
裁判では、代理人の弁理士が、互いに相手の文章のアラ探しをやりあって、裁判官を信用させた方が勝訴なのです。
もし出願人が、弁理士に出願を依頼する前に、剥離紙が1枚の試作品と、2枚の試作品をつくり、両方の例を説明していたなら、弁理士は「拝合」と言う表現を使わず、裁判にも勝てたでしょう。
弁理士の仕事は、お客様から頼まれ説明された内容を如何に正確な文章で書き、特許出願するかにかかっています。
実施例を考えて書き足すことは、時間的に大変な負担です。
そのうえ、商品開発の才能が必要で、忙しい弁理士には対応できません。
又、弁理士は、実施例を考えて書き足すことを本来の仕事とは考えておりません。
それは出願人の仕事だと考えておりますから実施例の書き足しをやる訳がありません。
裁判官もそのように考えているようです。
一部の弁理士は、バネを弾性体など上位概念(バネもゴムもスポンジも含む広い意味)で表現し、権利範囲の拡張に努めてくれます。
ホンの一部の弁理士だと心得ておいたほうが良さそうです。
結論として、「自分の特許は、自分で守る」しかありません。
弁理士に出願依頼する前に、特許出願人自身が、いろいろな条件や試作品を検討し、どんな内容の特許出願をするか検討しなければ、強くて広くかつ模倣されない特許権は取れません。
少なくとも事前に複数の試作品を造り、この複数の試作品を依頼する弁理士に見せて説明して特許出願の方向を決めて下さい。
少なくとも、2つ以上の実施例を書き、請求項が限定された表現にならないように気をつけてもらいましょう。
そのためには、【非まじめ発創法】で【観る】ことから始めてください。
強いて言えば、【観りゃ〜ぁ、分る】が、【見てても分らん】と言うことです。
【観て】 ⇒ 【目的を追求し】 ⇒ 【新しい手段を組合せる】
忘れないでくださいね!
事例2. 『マジックテープ』が落ちた落し穴
大企業さえ 落し穴に落ちる
これは、ファスナー(マジックテープ)事件です。
この発明品は、散歩中にズボンに付いたブタ草の実をヒントに欧州で発明されたファスナーを日本の大手繊維メーカが実施権を得て商品化したものです。
大手の資本力で販売に成功したものの、販売力の弱い小さな会社であったら大問題だったことでしょう。
もっとも、外国の元の出願を日本語に翻訳したものは、やむを得ないものもありますが・・・?
図を先に見ていただきましょう。
図1は、権利者のもので一方の片には多数のJ型突起が、他方の片には多数の逆U型突起が設けられ、両者を押し付けるとJ型突起と逆U型突起が互いに絡み合うものです。
図1

図2

図3

一方、模倣品である図2は、両突起ともJ型突起であり、右側の図3は、両突起ともきのこ型突起で、使い方は全く同じです。
この事件の判決文を見てみましょう。
判決の要点「J型と逆U型の突起を備えたファスナーの権利は、J型と逆U型の突起の何れかを欠き、茸型等の突起を備えたファスナーには及ばない」としました。
J型と逆U型の突起の何れか一つを欠いただけで模倣品から合法品になってしまうのが特許権です。
このような合法品を私は合法的模倣品(造語)と言っております。
こうした合法的模倣品が出ない合法的模倣品予防対策は、特許出願の事前準備が大きなカギを握っています。
この特許出願の事前準備として「非まじめ発創」で「剥離紙」や「J型と逆U型の突起」による徹底的な「目的の追求」が大変効果的です。
「剥離紙」は、2枚に切っても「効果」が落ちません。
むしろ使い勝手が良くなります。
マジックテープの「突起の形状」は、色々組合せが考えられます。
「J型と逆U型の突起」にこだわる必要はなく、「J型同士」でも良いし「S型と組合せ」手も良いでしょう。
事前に、少なくとも2〜3点の突起の形状を検討しておけば、違う結果となったでしょう。
事例3. 悲惨な結末『窓用換気扇』
出し方を間違えると
こんな悲惨な結末が待っている
これは、私が身近に体験した大変悲惨な事例です。
30数年前、田無市(現:西東京市)の零細企業S社の実例です。
特許出願は、出し方を間違えると、弁理士への頼み方を間違えると、ライバルに知恵を与える結果になるばかりか、与えた知恵が牙を剥いて自分に襲い掛かってきます。
よく読んで参考にして下さい。
今から30数年前といえば、敗戦から20年。
日本経済も力をつけ、昭和39年、東京オリンピックを開催できるまでになった頃です。
オリンピックでは、体操・レスリング・柔道・ボクシング・重量挙げ・バレーボールが大活躍し、金メダルだけで16個も獲得しました。
また、時効が成立してしまいましたが、昭和43年には、府中市で「3億円強奪事件」のあった頃です。
これから書く「窓用換気扇」は、私にとって忘れることができない事件でもあり、出し方を間違えたときの特許権の恐さを思い知らされる事件でもありました。
当時は、一般家庭は勿論のこと、大企業でさえ空調設備なんていう気の利いたものはなく、事務所でさえ扇風機オンリーでした。
室内換気はせいぜい窓の開け閉めだけで、一部は、壁に孔を開けて換気扇を取付ける程度でした。
こんな時代にS社のO社長が、窓を閉めたまま換気ができる「窓用換気扇」を開発したのです。
この「窓用換気扇」は、既存の窓にワンタッチで取付けられるものです。
当時としては、画期的な商品でした。
図1
図1は、S社の出願した「窓用換気扇」です。
上方に枠にはまった換気扇があります。
この換気扇の両側に伸び縮みできる2本の支柱が垂れ下がっています。
換気扇の下の2本の支柱の間には、ボードが取付けられています。
当時の日本の経済力では、この程度の商品なら一般家庭でも手の届く商品だったのです。
当時の過程電気店はまだ未整備で、〇〇電気店、△△ラジオ店などのパパ・ママストアーが幅を利かせておりました。
こんな中、S社は、建材店ルートを開発し、「窓用換気扇」が、順調に売上を伸ばし始めました。
この様子を松下、三菱、東芝、日立などの家電大手が黙って見過ごすはずがありません。
各社から一斉にサンプル出荷の要請を受けたO社長は、大手の何処かと取組めるようになると、取らぬ狸の皮算用でホイホイとサンプル出荷に応じていました。
当時は、まだ特許の出願公開制度がないにもかかわらず、特許制度を理解していない社長は、特許出願の明細書もドンドン見せていました。
知らないとは恐いものです。
順調な出だしとサンプル出荷の要請に調子に乗ったO社長は、借入金を増やし設備も増強しました。
ところが、サンプルと特許の明細書を見た大手家電各社は、請求項(特許権の権利を主張する内容を書く欄です)の弱点を突いた「窓用換気扇」を一斉に発売したのです。
大手家電各社のサンプル出荷の要請の目的は、ここにあったのです。
最初からS社と提携する意思など全くなかったのです。
結果論ですが、それを見抜けなかったO社長の大ミスでした。
大手家電各社の発売した「窓用換気扇」は、S社の「換気扇の両側に垂れ下がる伸び縮みする支柱のない換気扇」です。
「特許の落し穴」を読んだあなたは、もうお気付きでしょう。
請求項に書かれた部材のうちの1点でも無くした商品は、特許権に触れないのです。
大手家電各社に文句を言っても全く話に乗ってきません。
当然です。
最初からそれが目的なのですから。
法的に手を打てないのです。
大手家電各社の「窓用換気扇」は、デザインも性能も格段に優れています。
商品力が全く違います。
図2は、大手家電各社の「窓用換気扇」です。
図2

S社の「窓用換気扇」から「支柱」をなくしただけです。
一方S社の商品力の劣る「窓用換気扇」は、急激に売上を落とすだけでなく、大手家電各社の「窓用換気扇」を見た建材ルートからは返品の山です。
その上、S社は、設備投資で生産力の向上しています。
自由経済の元、資本の理論は苛烈です。
当時も今も代りありません。
これでもう、勝負あったり。
お父さんならぬ倒産です。幼稚園児と乳飲み子を抱えたO社長は、夜逃げ同然の引越しでした。
特許出願の落し穴
ここでは、代表的な事例を3件挙げました。
特許権は取れたが、裁判で特許権者が負けた事例は、ホンとにたくさんあります。
なぜこうも易々と、モノマネを許してしまうのでしょうか・・・?
特許出願を急ぐ気持ちもわかりますが、マネられて裁判で簡単に負けるような出願ならしない方が良いでしょう。
出願経費だけでもバカになりません。
ほとんどの事例は、弁理士に出願依頼する前の出願準備段階における準備不測が原因です。
その「弁理士に出願依頼する前の出願準備」に何をすればよいのでしょうか。
「宅配便の送り状」の例の後にも書きましたが、
弁理士に「出願依頼する前」に「非まじめ発創法」で
もう一度 「観て」 「目的を追求し」 「目的を追求手段」
を考え直してください。
出願が少し遅くなったり、経費が多少高くついても、結果的に得ですよ・・・!
落とし穴『脱出対策』
社長さん! 御社の特許
無断で マネられて いませんか ?
弁理士はやってくれない 特許の落とし穴脱出対策
『特許の落とし穴穴脱出作戦』の具体的実例
私:坂井が、三条市の山田社長さんから特許出願の相談を受けたときの出願までの流れです。
山田社長さんから構造が大変簡単な『棚』の特許出願の相談を受けました。この『棚』は、棚板の前端に『溝』を掘っただけ。
こんな簡単な『棚』で特許権を取った上に模倣も防ぎました。
強い、マネられない、模倣されない特許が取りたければ、
あなたも、このような事前準備をご自身でやってから弁理士に頼みましょう。
それでは、始めますよ。
山田:棚板にCD(コンパクトデスク)をはめ込む『溝』を掘った
だけなんだが、特許が取れるだろうか?
坂井:なるほど、相変わらず面白いことを考えるねぇ!
でも、特許調査しましたか?
山田:うン、一通り調査したんだが、こんな『棚』の出願は、
なかったんだが、特許が取れるだろうか?
坂井:それなら特許が取れる可能性があるね。でも、特許庁の
審査官が調べるとあるかもしれないから、その覚悟はして
おいてくださいよ。
山田:あぁ、その覚悟はできているから出願してくれんか。
坂井:それではお聞きしますが、この棚の一番重要なところは、
「棚板の前端に『溝』を掘った」と言うことですね。
この『溝』、別の作り方はないですか?
山田:相変わらず根掘り葉掘り聞いてくれるねぇ。今までの弁理士
は、そんなことはまったく聞かず、出願原稿も見せずに、
「はい、このように出願しました。料金は○○円です」と
言って、特許出願していた。お陰で俺は、出願するときは
楽だったのだが、チョット手を加えてマネられると、もう
手も足も出せない。結局、マネられ損で、後で散々苦労させ
られることが多かったなぁ!
坂井:それは、そうでしょう。出願人が特許を知らないんだから
言われたとおり書けば、文句も言われないし、何しろ明細書
書きが楽なんですよ。挙句に時間もかからないし!
社長さんは、ホームページの「特許の落とし穴」やゴールド
特許事務所のバットマン氏の投稿メールを読んでくれたん
でしょう。
私だって楽をしたいんだが、分っていて社長さんに損をさせ
るわけにいかないですからねぇ。
山田:有難うさん。だからあんたにしか頼めなくなったんだよ。
坂井:本題の「『溝』の別の作り方」を教えてください。
山田:先ず第一に、「棚板の前端に『溝』を掘る」。二つ目は、
「棚板の前端に『コ状のレール』を取り付ける」。三番目、
一・二番目は、『溝』を棚板の前端の上側に設けたんだが、
『はめ込んだCDが、落ちない構造のコ状の溝』を棚板の
前端の下側に儲けてもいい。四番目、・・・・・。
・・・・・。
坂井:社長さん、さすがに良く考えてくれましたね。二番目の
『コ状のレール』を書かないとこの出願はムダになる
ところでしたね。
これを1本の出願にまとめるのは、骨だなぁ(独り言)。
山田:しょうがないだろう、あんたが教えたんだから!
だから、あんたにしか頼めなくなっただよ。
坂井:あっ! 聞こえましたか。地獄耳ですね。
分りました。ともかく、これを出願原稿にまとめてきます。
その上で、再チェックしてくださいね。
【注意事項】
このやり取りで、一番大事なことは、具体案を一つだけにしないことです。上の例のように、四つも、五つも案を出さないまでも、絶対マネられたくない案を少なくとも二つは用意することです。
上の例の場合、第一の案「棚板の前端に『溝』を掘る」と、第二案「棚板の前端に『コ状のレール』を取り付ける」は、絶対に外してはなりません。
もし、第一案だけを弁理士に説明すると、他人が第二案を作って販売しても、権利侵害で抑えられない危険があるからです。私は、これを【合法的模倣】と呼んでいます。
これは、『特許逃れ』のことです。
考え方としては、第一案の一番重要なところ、ここでは、『溝』ですが、この『溝』の『目的』を良く考えてください。この『溝』の『目的』は、「CDを棚の前方に向けて立てる」ことです。「そのためにどんなやり方があるか?」を考えてください。
もう一つの重要なことは、この『溝』の『目的』を「どうやって具体化するか?」
この重要な二点を考え、出てきた答えのうち、マネられ・模倣されては困るものを弁理士に説明してください。
これだけで、【合法的模倣】の80%は防げます。
もう一つご注意。決して『実用新案』で出さないこと。
今の『実用新案』制度には、出す価値がありません。
この棚の出願原稿を山田氏にチェックしていただいて特許出願しました。
特許出願後、商品をもって大手通販に売り込みに言ったところ、
大変好評で、次々と契約が入りました。中には、山田氏とは別
に、すでに商品化を終え、販売直前の大手もありましたが、特許
出願しておりませんでした。この大手は、さすがに大慌てです。
まさか、こんな簡単な構造の『棚』を山田氏が、特許出願して売込んでくるとは考えてなかったのです。
実は、山田氏も一瞬『ドキリ』としたのです。もし出願していな
かったり、出願が遅れていたら、乱売合戦で利益が見込めない
商品になるところだったわけですから。
大手業者:無条件で取引口座を開設するから、今、作った○○
台だけは、目をつむって売らせてくれ。他の商品も買う。
山田社長は、この○○台の販売を拒否できたのですが、普通、 大手業者が、従業員数十人の企業と、こんな好条件で取引を始めることはあり得ませんから、今後の取引を考えて受け入れました。
特許出願の威力です。
しかしながら、すべてが順調なわけではありません。
特許制度を誤解し、『こんな簡単な構造で特許が取れるわけが
ない』とマネする模倣業者もいました。
※ 特許は、構造に与えられるのではありません。
今までになかった『新しい考え方』に与えられるのです。
例えば、水の江滝子氏の『底に孔を開けた盃』も特許権です。
こうした模倣業者には、弁理士を通して『警告書』です。「権利
化された折には、『警告書』を郵送した時点にさかのぼり損害 賠償を請求する」と書いた『警告書』です。
好調な売れ行きと模倣業者の出現を見て、早速、権利になるか
どうか特許庁に審査してもらう手続きをしました。
これを「審査請求制度」と言います。
「審査請求」から約半年後、特許庁から山田氏より前に出した他社の特許出願を引合いにした「拒絶理由通知」が来ました。
※ 現行の審査請求制度では、審査請求した約90%に「拒絶
理由通知」がきます。「拒絶理由通知」がきたうちの50%以上は、意見書」と「手続き補正書」の提出で、特許権が取れます。
「拒絶理由通知」は、「拒絶するためではなく、出願人の意見を聞くための制度」です。
早速、「意見書」と「手続き補正書」を提出したところ、約3ヵ
月後に「特許査定」が届きました。
※ 「特許査定」は、「拒絶する理由がないから特許権を与える」
と言う趣旨の書類です。後は、登録料を払うだけで特許権です。
「特許査定」がきた山田氏は、当然、強気です。特許裁判の準備
をしながら、「前に出した『警告書』の時にさかのぼって損害賠償
を請求する」という『警告書』を再度発送しました。
まさか『溝』を掘っただけで『特許』になると思っていなかった
のですから、模倣業者は、大あわてです。山田氏の特許明細書を
見て、ここまで書き込まれたらそう簡単に抜け道がありません。
前に話した『合法的模倣』の道は閉ざされています。その上、特許
庁が一端下した『特許査定』もそう簡単に引っくり返せるものでは
ありません。従順な子羊のように、従うより他、道がないのです。
如何でしたか?
『特許の落とし穴』に嵌まらないための出願対策の一端を明かし
ました。これが、特許出願をする前にやるべき対策の第一歩なんです。
この出願前の対策抜きの『丸投げ出願』は、『特許の落とし穴』
にスッポリ嵌まり易く大変危険です。
この『特許の落とし穴』の怖さを理解していただきたくて
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