建築物の改装時に、床に張り付けた樹脂製タイルを剥すときに使うスクレーパの例です。
A社は、図1のようなスクレーパの意匠権を持っていて、図2のようなスクレーパを開発したので意匠権の出願を考えておりました。
図1 図2
しかし、ご存知のように意匠権は、チョッと意匠を変えると権利から外れます。
川の字に並んだ溝の真中の1本をなくしを両側の2本の溝を真直ぐな溝に変えるだけで意匠権は逃げられるでしょう。
A社の開発した商品は、スクレーパの裏側に帯板を取付け、スクレーパの強度の向上を狙ったもので、前後方向に帯状のビードを設けた意匠権と同じ考え方ですから特許権は難しそうです。
A社の社長さんは、裏側の帯板をスクレーパの補強材と考えておられましたが、私はこの帯板を単なる補強剤ではないと見たのです。
それではこの新開発商品の帯板の目的はなんでしょうか・・・?
私は、スクレーパ全体ではなく、スクレーパの裏面の帯板とニラメッコを始めました。
帯板は、「への字」に折れ曲っていて、スクレーパ本体との間に空間があります。
1時間、2時間・・・分かりません。
4時間、5時間・・・相変わらず分かりません。
翌日も、翌々日もニラメッコの連続です。
ある日曜日、私は近所の公園をブラブラ散歩していました。
子だもたちが元気に遊んでいます。
「ギッタン、バッタン」シーソの音がします。
私は、子供たちが遊ぶシーソを「ボー」と眺めていました。
右側が上がり、左側が下がる。
次に、左側が上がり、右側が下がる・・・・・。
支点を中心に左右が交互に上がったり下がったりの繰返しです。
・・・・・
こうして子供たちの遊ぶシーソを見ていた私は、突然「ヒラメキ」ました。
「分かったぞ〜!」と叫んで駆け出したい気分になりました。
(まるでアルキメデスみたいですね?)
その答えは、補強材ではありませんでした。
補強材の役目もありますが、単なる補強材ではなかったのです。
じらさないで早く言え・・・!
は、はい・・・ 今直ぐ言います。
「への字」に折れ曲ったスクレーパの帯板は、「支点」だったのです。
この帯板は、補強材としてではなく「支点」としての有効な価値がありました。
図2のスクレーパのビードの効果に勝るとも劣らない補強材としての効果に加え、目的も、構成も異なる上に別の効果がありました。
床に張られた樹脂タイルと床の間にスクレーパの先端を差し込み、「への字」に折れ曲ったスクレーパの帯板の頂点を支点として把持部を押し下げると、樹脂タイルが簡単にはがれるのです。
特許権は形ではなく 『考え方』 です。
考え方を具体的に表したのが形です。
従来技術と「目的、構成、効果」のいずれかが違えば、「思想が違う」として特許権が取れる可能性が強いのです。
この帯板が、「支点としての帯板」なら特許権が取れる可能性が強いと言うことです。
もう私は天にも登る思いでした(少しオーバーかな・・・?)。
すぐにA社の社長さんに連絡を取りました。
30分後にはお目にかかって説明していました。
勿論社長さんも大喜びで、直ぐに特許出願の準備です。
だが待てよ。
このままでは何通りもの逃げ道が考えられる。
特許権が取れても「合法的模倣品(私の造語です)」を防げない。
前の図の「帯板」を「支点」と考えるなら他の形の「支点」、例えば図3のような「支点」もあるでしょうし、他の形も考えられます。
前の図の「帯板」を「補強材としての支点」と考えるならスクレーパの両側を折り曲げた図4でも良いし、他の形も考えられます。
図3 図4
1本の特許出願で、関連する内容の実施例を3本も、5本分も書き込んで出願しました。
特許権も数倍に強化されました。
それだけではありません。
これらの全ての例をあわせて1本で出願すれば、別々に出願したときとくらべ出願料は、少し割高になりますが、審査請求料は約半分で、大変に安くつきます。
何よりも大きなメリットは、特許権の権利の広さが
1+1≠2 1+1>2 すなわち、実施例の数より大幅に広くなリ、
時には、数倍、数十倍にもなることがあります。
言ってみれば、100坪、1,000万円の土地の隣の200坪の土地が、1,200万円で手の入るようなものです。
あなた様は、どちらの土地が欲しいですか・・・?
